あなたの知らない世界
お盆も終わり夏休みも終盤戦ですね。夏の甲子園も間もなく優勝校が決まる事でしょうし、地球を救うあのテレビ番組でタレントさんが走り出したら、夏休みの終わりはもうすぐそこですよ。地球を救う番組は欽ちゃんが出なくなってからさっぱり観なくなっちゃいましたが、今でも夏と言えば思い出すのがあなたの知らない世界です。
あなたの知らない世界を知らない世代に説明しますと、その昔4チャンネルでやってた「お昼のワイドショー」という番組がありましてね、その番組のコーナーであなたの知らない世界という心霊特集をやってたんです。視聴者からの心霊体験の再現ドラマとか、心霊写真の解説とか、途中で入る日本文化センターテレビショッピングは、誰が買うんだ?という品物ばっかりでしたが、つまりはおっかない話を真っ昼間からぶち込んでお茶の間に涼を届けてくれるという、隅田川の花火大会に並ぶ夏の風物詩があなたの知らない世界ってわけです。
番組には心霊研究家の新倉イワオという、名前でビビらせに来てるオジサンがコメンテーターで出てまして、私たちの世代にはそれはそれは有名な方でした。
お盆を過ぎて海で遊んでたら足を引っ張られたとか、居間にある人形の髪型が、気付けば黒柳徹子みたいになってたとか、皆さんも多少なりとも不思議な体験をされた方はいるとは思いますが、実はわたしにも忘れられない不思議な体験があるんです。
物心はあるが、未だ小学校に上がる前なのでたぶん4歳5歳くらいのピエール少年、1970年代です。うちは田舎だったので近所のこどもらだけで遊ぶのはいつもの事、その日もわたしを入れて4〜5人で河原へ遊びに行ってました。分かる人には分かると思いますが馬見ヶ崎という、とある地方の河原です。
夏の暑い日でしたね。河原で水遊びをしていたわたしは、履いてきたサンダルが流されてしまったんです。「婆ちゃんに買ってもらったサンダルが!」それを拾おうと流されるサンダルを追いかけた時でした。ズボッ!いきなり深みにはまってしまい、溺れてしまったのです。背丈以上の水の張ってある落とし穴に落ちた、そんな感じです。もがけどもがけど這い上がれず、もがけばもがくほど沈んでいく。苦しい?苦しかった?そこの部分は全く記憶にないですが、水中から上を見上げると、キラキラ光る太陽が水面へ差し込む様と、異変に気づいた一緒に遊びに来たヤツらが水中を覗き込んでいる顔は覚えてます。
あーもうダメなんだなー
このまま死ぬんだなー
なんて思った記憶はまったく無く、とにかく這い上がろうとバシャバシャやってたのは凄くよく覚えてます。必死で上へ上へともがいているその時、わたしの足を水中から誰かが押すんです。グッと押されてるというよりも外へ放り出される感じですね。外から引っ張り上げられた、ではなく水中から押された、です。黒ひげ危機一髪みたいにポーンと飛び出す、お笑いウルトラクイズの人間バズーカみたいにドーンと飛び出る。
見えない何かに押されて水中から飛び出たピエール少年は、スーパーボウルのハーフタイムショーでステージから飛び上がってきたマイケルジャクソン

何が起きたのか?死の淵から生還したのか?それともどっかで記憶の書き換えがあったのか?まったくもって分からないのですが、流されてしまったサンダルの事を婆ちゃんに言うとこっぴどく叱られた記憶がありますし、こうやってくだらない文章を書いてるって事はまだ生きてるって事でいいんだと思います。
不思議な事と時間がない時の連チャンは続くとはよく言ったものでして、さらに不思議な事がありました。というか誰も見たことの無い事が、と言ったほうが良いかもしれませんね。
この日の夜、おしっこがしたくなって目を覚ましたピエール少年は、寝ぼけまなことちんちんを擦りながらトイレへ行ったのです。おもむろにトイレの扉を開けると、そこには白い着物を着た女性が向こう向きでしゃがんでいたんです。ええ、怖さはあまり感じませんでしたね。というか幼すぎて霊とかそういう認識がなかっただけなのかもしれません。
だれ?と思った次の瞬間、そのしゃがみ込んだ女性がこちらを振り返ったのです。首だけをこちらに向けた白い着物の女性はうちの婆ちゃんでした。用を足すババアの後ろ姿、見たことありますか?あなたの知らない世界ですね。

