ほんの出来心
ぱちんこ店は大変大きなお金が動く場所。大型店の日々の売上はそりゃ相当な額になるってなもんです。万枚を夢見て、ラッキートリガーを目指して、ジャブジャブとサンドに一万円札をぶち込むお客様のおかげです。
「お前の給料は俺が払ってんだ!ガハハハ!」なんて言う常連のオヤジはまだ元気でしょうか?
たくさんのお金が動く場所には悪事を企む奴らが湧いて出てくるのもまた摂理。悪さをして玉をとる、いわゆる「ゴト師」は様々なやり方で玉を狙ってきます。釘曲げや糸吊りなどの古典的な手段から、電波や体感器などの器具ゴト。ハンドクリームで玉をベタベタにして釘と玉を絡みやすくさせる、曙町の嬢も真っ青のゴトもあります。これらの不正は、健全な一般ユーザーにしわ寄せがくるので絶対許しちゃいけません。

一方、お店側は悪さしないのか?綺麗でサラサラサラサーティかと言うと必ずしもそうではないのがこれまた事実なわけで。一部のホールは悪さをしていた「時代」があったわけです。
ぱちんこ玉の大きさは規則で「11ミリ」と定められてまして、それ以上でもそれ以下でもだめ。11.00ミリでなければならないのです。
その昔、とあるホールの新台入替。当時はですね、新台を買ってもらうと新装開店に合わせて営業マンが釘調整をする、というのがごくごく当たり前の事でした。納品された台はまず釘がバラバラで汚い。そりゃそうです、工場ではパートのおばちゃんがデカいハンマーでガシガシやって納品するわけですから。それを綺麗に整え、釘に玉掛かりしないようにするわけです。「部長、今日は何割くらいでやります?」綺麗に整えた台を、今度は指定された割数になる様に調整するのです。17割言われたら12.75ミリ、20割言われたら13.25ミリ、つまり11.00のぱちんこ玉と比較して20割ならヘソの大きさを13.25にすれば大体20割になる、みたいな感じで新装開店に備えるのです。割数の話は割愛しますが、12時開店、2.5円交換で20割いうたらそれなりの大盤振る舞いではあります。
で、開店前のホールでトンカントンカン釘調整をしてるとですね、その店の部長がやってきてふと言うわけですよ。「あのさーうち11.10だから気を付けてー」と。はて?このオッサンは何を言ってるのか?キョトン?としてると、言うわけです「イチゼロだから玉掛かり気を付けて」
なんとですね、11.00と定められてるぱちんこ玉。この店は11.10と他所より大きな玉を使ってたわけです。これが何を意味するのか?当時はまだまだハネモノや役物を使った一発台に近い権利モノが現役でしたので、他所の店よりも釘を開けられるわけですよ。見た目だけね。開いてる様で開いてない、NAI-NAIシックスティーンなわけです。もちろん違法です。
違反の玉を使ってセコくがめつい営業をしてたこの店。若かりしピエールはそんな事お構いなしに普段通りの釘調整をしたわけですよ。反抗的な態度で悪を懲らしめようとでもしたんですかね?どうかしてましたよ。案の定閉店後に呼び出され、ガラスの灰皿が飛んでくるかと思うくらいどやされましてね、さすがに玉が縮み上がりましたよ。


