壊し屋イワオ
先日、サッカー部の時の後輩が結婚したってんで、披露宴に行って参りましてね。お前何度目だよ、とか何とか言いながらも、それはもうしばらくぶりに披露宴なんて場に出席させてもらいました。
総勢70名ほどでしたかね。参加者が。私はサッカー部の連中と同じテーブルになりましてね。私の左隣がキーパーだった「ちゃーさん」苗字が加藤だからちゃーさん、安易です。そして右隣が「イワオ」新倉だからイワオ。あなたの知らない世界です。

でね、このイワオ、温厚な見た目とは裏腹に、現役当時のプレースタイルがゴリッゴリの「削り屋」まさにガットゥーゾですよ。
「削り屋」とはですね、相手に対してファール覚悟で当たっていく、ボールキープとかそんなん関係なくガツガツ当たって行く、別名「壊し屋」対戦相手からも恐れられてました。
話を披露宴に戻します。
実に久しぶりの披露宴だったんですが、ホント変わりましたよ。いや何が変わったかって、まずゴンドラが降りて来ない。披露宴いうたら松田聖子の「赤いスイートピー」が流れる中、真っ赤なドレスを身にまとうの新婦と、全く似合ってない白いタキシードの新郎が、ゴンドラに乗って登場するのが当たり前かと思ってましたから。「今どきそんな事するヤツはいねーよ」左隣のちゃーさんがミズナラの水割りをチビチビ舐めながら言います。
それから二人の馴れ初めの紹介。二人はマッチングアプリで知り合って、なんて平気な顔して、司会の翔田千里似の熟女が言うんです。いやいやいや、マッチングアプリって出会い系だよね?ダイヤルQ2だよね?「今どきマッチングアプリで知り合って結婚なんて当たり前だよ」右隣の壊し屋イワオがミズナラをロックで煽りながら言います。しばらく披露宴なんてものに出てなかったら、世の中だいぶ変わってました。

そんな中変わってなかったモノ、私の知ってる披露宴がありましたよ。あれですよあれ、杏里の「SummerCandles」が流れる中、テーブルの真ん中にある、スカイツリー天丼みたいな形をしたロウソクに新郎新婦が火をつけて回るあれ。これは変わってなかった。永遠の愛を誓って火を灯しに回る二人。我々のテーブルのスカイツリー天丼似のロウソクにも無事火が灯りました。
場内が和やかな雰囲気に包まれる中、ふと右隣の壊し屋イワオを見るとですね、妙にソワソワしてるんです。なんかロウソクの火をつまもうとしてみたり、ミズナラくさい息を吹きかけようとしてみたり。だいぶ飲んだせいか?
「ちょイワオ何やってんだよ」イワオを止めるとヤツはこう言うんです
「ロウソクの火、消したらどうなるかな?」
いやー忘れてました忘れてました。
サッカー部時代、イワオが対戦相手から言われてたもうひとつのあだ名が「死神」だったって事を。


