詐欺師

新宿歌舞伎町、ルノワールだかシャガールだかモンテスキューだか、そんな名前の喫茶店。座り心地の良いソファーはついつい長居しちゃいます。隣はひと息ついてるサラリーマン、はす向かいはどう見ても堅気には見えないおぢさん、後ろの席はピエール好みの熟女5人組。

そんな店内でひと際異彩を放つ男性ふたり。細身のスーツに身を包み「俺、参上!」の雰囲気を醸し出す30代と思われるイケメン。そしてその男の対面に座るのが、スーツの男とは対照的な、ジーンズにノースフェイスの上っ張りを羽織った20代と思しきあばた顔の若者。なんの話をしてるのか?スーツの男はしきりに両手を広げながら何かを説明しています。亡くなったばぁちゃんが言ってましたよ「両手を広げながら喋るヤツはだいたい詐欺師」って。

メーカーとは一切関係ありません。

さて、わたくしは約30年もの間、ぱちんこ台をホールに売りつけてきた営業マンでした。

これ買わなきゃ次入らない、いやいや10台じゃなく20台行ってくれ、そうしないと導入が一週遅れになる。色々と御託を並べては台を買ってもらって、いや、半ば強引に、無理やり口に突っ込んできました。ただね、それを口に含んでくれるならいいですが「ペッ」と吐き出して投げ返してくるホールももちろんありましたよ。お馴染みパンチ店長はガラスの灰皿を握り出します。

そんな中、すごく騙せた、もといすごく有効だったトークが「今回の基板はD社で作ってます」これを出すとパンチ店長も「ピエちゃん早く言ってよぉ」と満面の笑みです。

ぱちんこのメイン基板って基本的には自社で製造してますが、時々外注する事もあったんですよね。D社と言えば、ぱちんこ業界では泣く子も黙る稼働貢献という呪文を生み出した、あのD社です。当時からD社への信頼度は稼働貢献100週クラスの機械並。そんなD社が作る基板はめちゃくちゃ良い波になる特別な基板。ウソかホントか?まことしやかに言われていた事です。

いつもは買い渋るくせにD社ってだけで買ってくれるお店。わたくしの両手は相当広がっていたに違いありません。

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